私たちの身の回りには、たくさんの感覚情報(刺激)があります。
たとえば、食器洗いをする場合、水道の蛇口から水が流れる音が聞こえ(聴覚)、シンクには、お皿、コップ、スプーンなどの食器が目に入ります(視覚)。そして、食器を洗う時の洗剤やスポンジ、水、食器の感触(触覚)、背筋や腰を伸ばすと上半身がまっすぐになっている体の感じ(固有覚)、体の傾きの調整やバランスを保とうとするはたらき(前庭覚)、など数えきれないほどのたくさんの情報があります。
しかし、それらの多くの情報があるにも関わらず、頭の中で混乱せずに食器洗いができるのは、脳に送られてきた多くの感覚情報を処理し、その中から食器洗いに必要な情報をうまく選択しているからです。このように、必要な感覚刺激を交通整理する脳のはたらきを「感覚統合」といいます。
●こんなお悩みはありませんか?実はこんな感覚が過剰だったり不足していたりします。
・ずっと動き回っていて、落ち着きがありません
→前庭感覚が足りていないため、欲している状況
・揺れやスピード感のともなう遊びを怖がります
→前庭感覚が過敏
・疲れやすく、すぐに姿勢がくずれて椅子に座っていられません
→前庭覚と固有覚の未発達(腹筋、背筋群の発達を調整、開始する力の未発達。バランスを保つ力の未発達。)
・ダンスなどの模倣ができません。スキップや、ボールあそびも苦手です
→前庭覚と固有覚の未発達(中心軸が定まっていない。左右の手足が協調していない。眼球運動の未発達。身体の輪郭の把握の未発達。運動企画の未発達。)
・偏食がひどく、決まったものしか食べません。大きな音やベタベタした感触を嫌がることもあります。
→触覚の原始反射(本能的な反射、成長とともに自然消滅する)が残っており、触覚を識別するはたらきが鈍く、感覚が過敏な状態。
●3つの大切な基礎感覚
感覚系の中でも視覚や聴覚よりも基礎感覚として最も重視されている3つの感覚について。
(1)触覚
触覚は触ったり、触られたりすることを感じる感覚で、皮膚を通して感じます。針でチクッと刺された痛み、水を触ったときの温度、毛布の柔らかさなどを感じる感覚です。触覚には主に4つのはたらきがあります。
・情緒を安定させるはたらき
・防衛するはたらき
・識別するはたらき
・身体の輪郭を把握するはたらき
(2)前庭覚(平衡感覚)
前庭覚は自分の身体の傾きやスピード、回転を感じる感覚です。受容器は耳の奥にある、耳石器と三半規管です。前庭覚には主に、5つのはたらきがあります。
・覚醒を調整するはたらき
・重力に抗して姿勢を保つはたらき(低重力姿勢)
・バランスをとるはたらき
・眼球運動をサポートするはたらき
・身体の機能を把握するはたらき
(3)固有覚(固有受容覚)
固有覚には自分の身体の位置や動き、力の入れ具合を感じる感覚で、筋肉や関節の中に受容器があります。固有覚には主に7つのはたらきがあります
・力を加減するはたらき
・運動をコントロールするはたらき
・ 重力に抗して姿勢を保つはたらき(低重力姿勢)
・バランスをとるはたらき
・情緒を安定させるはたらき
・身体の輪郭を把握するはたらき
・身体の機能を把握するはたらき